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  • 河井 直也

退去交渉


昨年夏より継続的に相続対策や認知症による資産凍結対策等、

資産の防衛や活用について様々なお手伝いをさせて頂いている、70代のE様。


そのE様が数十年前にご兄弟から相続したという

都内城南地区の閑静な住宅地にある土地には

広い地積に似つかわしく無い、

小さく古い借家がポツンと建っておりました。


登記簿にも「建築時期不明」書かれており、

見るからに築後50年以上は経過している様子。

更には外から見ると、建物が傾いているようにも感じます。


資産運用や相続の観点からも、また安全性の観点からも

この土地と建物を放っておいてはいけないと思い、

現在の古い建物を取り壊し、

新たに賃貸マンションを建築するご提案を致しました。


間取りプラン作成や収益計画作成、

建設会社の選定からローン付け等々

賃貸経営を始めるにあたり必要となる全ての準備をお手伝いし、

E様が無事に建設会社との契約を終えたのが今年の1月末。

翌月には早々に融資の承諾も得られました。


さて、次は現在お住まいの賃借人様に転居のお願いをしなければ、と

賃貸借契約書を確認したいとE様にお願いしたところ、

「え?無いよ、そんなもの…」と。


どうやら、毎月の賃料はしっかりと振り込まれているので

2年ごとの契約更新もせず、「なぁなぁ」にしてしまって久しいようです。


契約の内容が確認できなければ、退去に関する規定もわかりません。

どうにか契約書を手に入れたいと、客付けをした不動産業者を聞き出し、

探してみたものの既に解散済み。


ならば賃借人様を直接訪問、と思った時には

既に世の中はコロナ渦の真っ最中でした。トホホ…


仕方がないので配達記録付きの文書にてお知らせを送ったのが3月末。

E様のご厚意により、慣例の倍ほどの経済的援助の申し入れを添えてみたものの

賃借人様からは何の返事もありませんでした。


その後も何度かお手紙を送り、折り返しのご連絡をお願いしたのですが

何のご連絡も頂けず、ただ時間だけが過ぎていきます。


完成後の新賃借人募集の都合上、8月末には着工したいという建設会社。

その為には遅くとも7月中には退去をして頂き、

建物を取り壊して地盤調査を行わなければなりません。


そして5月末、待ちに待った緊急事態宣言の解除。

残された時間はすでに2か月もありません。


賃借人様にお会いするべく、数か月ぶりに物件に伺います。

しかし駐車場には車が停まっているものの、

インターホンを押しても何の反応もありません。

ポストにメモを書いた名刺を残してみても、その後も連絡は一切なし。


毎日のように電話をしてくる建設会社の担当者。

日に日に声色が厳しくなるE様。

もう完全に板挟みのどん詰まりです。


タイムリミットをひと月後に控えた6月中旬、

意を決した私の「張り込み生活」が始まりました。


刑事ドラマよろしく、建物を遠目に観察できる場所に車を停め

来る日も来る日も賃借人様の帰りを待つ日々。


しかし連日夕方から22時や23時まで張り込んでもお会いできません。

以前は何度か見かけた賃借人様のお車も全く見かけなくなりました。

ならば朝なら、と思い7時頃に行ってみても車も反応もなし。

もしや住んでない?と思うも電気メーターはしっかりと回っています。

ある夜には、室内から照明の明かりとテレビの音声が漏れているにも関わらず

インターホンには無反応。


経験的に、これは完全に対決姿勢だと思われます。


本来であれば一番避けなければならない事態ではありますが

こちらとしては賃借人様に失礼のないよう、

E様からは厚遇を引き出し、

しっかりと時間を掛け手順を踏み、

対応をさせて頂きました。

しかしE様の権利を考えると仕方がありません。

E様にはこれまでの経緯や今後の可能性等をしっかりとご説明し、

ご理解を頂いた上で

お世話になっている弁護士に予約を入れました。

そして建設会社にも事情を説明し、

職人さんを押さえていた工程を一度解除して頂きました。


そして弁護士との相談を翌日に控えた7月某日。

当たり前ではありますが、ご機嫌の宜しくないE様と

翌日の待ち合わせ等を擦り合わせていると

見知らぬ電話番号から着信が入りました。


「すみません、忙しかったもので・・・。」


!!!!!


とうとう賃借人様からお電話がかかってきました。


曰く、ご主人様のお仕事がコロナ渦の影響でとても忙しく

連日、日の出とともに出社し帰りは午前様が当たり前という状況で、

月に1度取れるか取れないかという休日さえも

溜まった家事やご家族の事情によりやはり忙殺されているとの事。


お話を伺えば伺うほど、これまでの経緯と辻褄が合い納得できる事ばかりで

知らぬとはいえ、大変困っている方を追い詰めていた自分が

とても恥ずかしくなりました。


あれから2か月。

その後もお休みがなかなか取れないご主人様に代わり

私が転居先の選定から引っ越しの手配等を行ってまいりましたが

ようやく本日、すべての日程が確定し、着工の段取りが整いました。


不動産・資産の専門家としてのこれまでの長い経験から、

大抵の事は最高の結果に収める事が出来ると信じておりましたが

完全なる慢心であり過信であり、

その慢心により、危うくこのコロナ渦で苦しむ方を

更に追い詰める事になるところでした。


完成はまだまだ先、来春です。

今後も想定外の事が起こるかもしれませんが

慢心せず過信せず、誠意をもって丁寧に努めていこうと思います。

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